Vol. 17 「ドラゴン・ハート

 私が映画を観る時は、大抵、公開のだいぶ前から「これは観に行くぞ!」と決めた作品を観に行くことが多く、例えば予告編やTVCMを観て衝動的に観に行ったりすることはどちらかというと少ない。そういう意味では、今回紹介する「ドラゴン・ハート」は予告編を観て「観てみよう」と思った数少ない作品の一つである。では、なぜ、観に行く気になったのかというと、一つはCGで作られたドラゴンの動きが非常にリアルでカッコ良かったこと。そして、もう一つは劇中に出てくる「ドラゴン・スレイヤー」というセリフに魅力を感じたからであった。早い話、予告編を観た限りでは、「ファンタジー系RPGの実写版」と言った感じだったのである。しかし、とはいうものの(私が知らないだけだったのかも知れないが)TVCMや雑誌の特集等もあまり見かけないし、人気俳優が出ているわけでもない(強いて挙げれば、ドラゴンの「声」をあてているショーン・コネリーくらい?)ということで、実は、はっきり言って内容についてはあまり期待していなかった。

 ところが、実際観てみるとこれが結構楽しめるのである。まず、第一に脚本が良くできている。当初はゲームのRPGのように勇者が剣を片手に悪い龍を退治しに行く話かと(勝手に)思っていたので、ストーリー的には一本道の単純なものかと思っていたのだが、実は全く逆で、本当は主人公とドラゴンの友情の話であり、倒されるのは農民をいじめる悪い王様の方だったのである。もちろん、ここに至るまでにはいろいろとエピソードや伏線等があるのだが、あまり詳しく書くとネタバレになるのでここでは割愛する。また、逆に期待通り(もしくはそれ以上)だったのが、ドラゴンの特撮である。とにかくCGのデジタル合成が巧みで、観ている時は合成であることすら全く意識させないくらいに自然で違和感が無いのである。ちなみに、このドラゴンの特撮を担当しているのは、あの「ジュラシック・パーク」で有名な「ILM」(インダストリアル・ライト&マジック)であるが、少なくともリアリティという点では「ジュラシック・パーク」を超えているのではないだろうか?そして、それらにもまして私が気に入ったのは、映画の中に出てくる中世ヨーロッパの風景を再現したロケーションである。実際のロケは東欧のスロバキア等で行われたらしいが、ロマネスク様式の城や果てしなく広がる森、広々とした麦畑、等々、(もちろん実際に見たことはないが)おそらくかつての中世の頃はこうであったに違いないと思わせるような風景が次々と出てきて、自分も一度行ってみたい、という気にさせられてしまった。

 まあ、個人的には、例えばドラゴンを人間くさいキャラクターにしようとするあまり、多少(ドラゴンの)演技が過剰気味な点等がちょっと気にはなったが(親子で観に来ていた子供達には逆に受けていた)、とりあえず、中世のおとぎ話を読む感覚で肩の力を抜いて観れば、結構楽しめる作品だと思う。

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