Vol. 14 「1941

 これを読んでいる人で、「スティーブン・スピルバーグ」の名前を聞いたことのない人はまずいないと思う。とにかく、公開される作品は必ずヒットするといっても良い程の今や誰もが認める大監督の一人であるが、ところで、皆さんは「スピルバーグ」と聞いてどんな作品を思い出されるであろうか? 「未知との遭遇」、「E.T.」、「ジュラシック・パーク」、ちょっと渋いところでは「シンドラーのリスト」等々、まあとにかく挙げればキリがないのだが、そんな中で、今回紹介する「1941」を挙げる人はなかなか通な人かもしれない。(別に私が通だというわけではないが)

 この「1941」(ちなみに "イチ キュウ ヨン イチ" と読む)は1979年の作品で、ちょうどスピルバーグが「ジョーズ」、「未知との遭遇」と立て続けにヒットを飛ばし、才能ある若手監督として注目を浴びるようになってきた頃のものである。しかし、たまたま同時期に「地獄の黙示録」が公開されたこともあってか、(少なくとも日本国内では)さほどヒットはしなかったように記憶している。その為、この「1941」はいわゆるスピルバーグ作品の中では、どちらかというとマイナーな部類に入ってしまうようである。内容はというと、これがスピルバーグにしては珍しく正当派(?)のコメディ映画で、しかも自分の作品も含めた色々な映画のパロディが入っているような、どちらかといえば「裸の銃を持つ男」等に近いような作品である。ただ、こう書くと何となく「異色作」という印象を受けるかもしれないが、決してそんなことはなく、脚本は今やスピルバーグとは切っても切れない関係のロバート・ゼメキスが書いているし、音楽はいわずと知れたジョン・ウィリアムスが担当するなど、今ではお約束のスタッフが既にこの作品でも参加している。出演している役者も今は亡きジョン・ベルーシとこれが映画初出演となるダン・エイクロイドの「ブルース・ブラザース」コンビを始め、クリストファー・リー、さらには「世界の」三船敏郎まで出ていて、特にジョン・ベルーシは観ているこちらの方が圧倒される位ノッケからキレまくっているし、三船敏郎もそれに負けず劣らずイッちゃっていてなかなかすごいものがある。

 この手の作品ではあまり意味が無いのだが一応ストーリーを説明しておくと、日本が真珠湾攻撃をしかけた日から6日後の1941年12月13日、一隻の日本海軍の潜水艦がハリウッドを攻撃しようとして、間違ってカリフォルニア沖にやって来てしまったところから話が始まる。たちまち南カルフォルニアには「日本軍が侵略してくる!」というデマが流れ、街中は大騒ぎ。そんな、ある日突然パニックになってしまったとある街の24時間の出来事を幾つかのエピソードを同時進行させながら描く、という作品である。(全然、説明になってない?)

 はっきり言って、外国のコメディ映画につきものの「国民性の違いによる笑いのギャップ」は、当然この作品にもあるので、最初から抱腹絶倒な内容はあまり期待しない方が良いかもしれない。むしろ、単純に肩の力を抜いて観られる作品として観れば、結構楽しめると思う。確かに、スピルバーグ作品の中ではあまり陽の目を見ない作品であるが、それ故、一度観てみるのも良いかもしれない。

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