Vol. 8 「ラヂオの時間」

 ここ2回程ちょっとマイナーな作品が続いたので、今月はメジャーな(?)作品でいきます。先月も書きましたが、「Lie lie Lie」の中原俊監督の代表作に「12人の優しい日本人」という作品(風見鶏 Vol.106で紹介済み)があります。この「12人の優しい日本人」の脚本を書いているのが、「古畑任三郎」や「王様のレストラン」などでも有名な脚本家の三谷幸喜で、その三谷幸喜がついに監督まですることになった作品が、今回紹介する「ラヂオの時間」です。元々は、この作品も「12人の優しい日本人」と同じく、三谷幸喜が主催していた(正確には、現在「30年間の充電期間中」なので、まだ存在自体はしているはずなのですが(苦笑))「東京サンシャインボーイズ」という劇団用の脚本で、今回の作品はそれを一部手直しして映画化したものです。

 そもそも、私が三谷幸喜の名前を知ったのは、その昔フジTVの深夜にやっていた(後にゴールデンタイムにも移りましたが)「やっぱり猫が好き」というシチュエーション・コメディのドラマでした。その後、「東京サンシャインボーイズ」の存在を知ってからはそちらの舞台も観に行くようになり、「ラヂオの時間」の舞台版もその頃に観ました。ちなみに、今回の映画版でも主演している西村雅彦がこの「東京サンシャインボーイズ」のメンバーだったことは良く知られていますが、他にも、同じく映画版に出ている梶原善や近藤芳正、「12人の優しい日本人」で主演していた相島一之、さらに最近は三谷作品以外のドラマや舞台でも活躍している伊藤俊人や宮地雅子などがいて、今から思えばかなり贅沢な(?)劇団でした。

 さて、この「ラヂオの時間」ですが、どういう話かというと、「ラジオ弁天」というラジオ局が行ったドラマコンクールにとある主婦の書いた脚本が優勝し、その作品を生放送のラジオドラマにすることになったのですが、出演する俳優達が本番前になって突然わがままを言い出したために脚本がどんどん変わっていってしまう、という話です。おかげでプロデューサーは現場と編成の間で板挟み、生本番はトラブル続きで現場はパニック、挙げ句の果てには作者やスタッフまでわがままを言い出して…、と三谷幸喜得意の「ある限られた空間で、突然とんでもないハプニングに巻き込まれてしまった様々な立場の人間が巻き起こすドタバタコメディ」が展開していきます。元々の舞台版の脚本が書かれたのは、ちょうど三谷幸喜がドラマ「振り返れば奴がいる」を書いている頃でもあり、この作品にはその時の経験とかも少なからず入っているそうです。

 ただ、今回の映画版は、一部のギャグも含めて大筋自体は舞台版とそれ程変わりません。その為、私自身はむしろ「ここはこう変えたのか」とか「あそこはどう見せるのかな?」という方にどうしても興味がいってしまい、映画そのもののノリにはイマイチ乗れませんでした。が、とはいっても決してつまらないわけではなく、実際、私以外の客にはかなりウケていたので、少なくとも「ラヂオの時間」を初めて見る人(舞台版を知らない人)にはとても楽しめる作品だと思います。(なお、余談ですが、観る際には最後に流れるエンディングテーマまでしっかり「聞く」ことをお勧めします)

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