Vol. 6 「コールド・フィーバー」

 ここ何回か大作や話題作が続いたので、今回は本来の主旨にのっとって(?)久しぶりにマイナーな作品を取り上げてみることにしました。恐らくこれを読んでいる人で観たことのある人は誰もいないんじゃないかと思われる(なんて書いて、もしいたらどうしよう)、永瀬正敏主演の「コールド・フィーバー」です。以前にも書いたと思いますが、私は永瀬正敏は「ミステリー・トレイン」(この作品も近いうちに取り上げる予定です)の頃からわりと好きで、「濱マイク」シリーズなどはここで取り上げたりもしていますが、そういった意味では、この「コールド・フィーバー」も1995年の劇場公開時からいつか観たいと思っていた作品です。

 一応、簡単にストーリーを説明しておくと、ごく普通のサラリーマンの主人公が、アイスランドで事故死した両親の供養をするため一人でアイスランドに行き、そこで様々な人に出会ったりトラブルに巻き込まれたりしながら両親が死んだ最果ての土地を目指す、といういわゆるロードムービーです。特に派手なアクションやドンデン返しがあるわけでもなく、この作品も例によって淡々と話が進んで行くだけなのですが、不思議と観ていて飽きることはありませんでした。

 この「コールド・フィーバー」でもっとも印象的なのは、この話の舞台となる冬のアイスランドで撮影された「白い画面」です。その寒さは、観ているだけでも十分伝わってきますが、永瀬正敏にいわせれば「実際は画面で観る以上」だったそうです。しかし、一面雪と氷に閉ざされた土地で撮影されたその「白い画面」からは、厳しい寒さと同時に静けさや寂しさ、さらにある種の幻想的な雰囲気といったものも感じられます。実は、作品の冒頭に主人公がアイスランドへ旅立つ前の東京での生活が描写されているのですが、それはそのままこの「白い画面」との対比にもなっています。(ただ、この東京の日常風景のシーンは、間違っているわけではないもののどこかちょっと変です。まあ、外人の監督というところで、この辺はご愛嬌ともいえますが)

 また、この作品の特徴をもう一つ挙げるとすれば、シーン毎の登場人物が少ないことです。実際、全体を通しての登場人物の数は決して少ない訳ではないのですが、ロードムービーということもあって、一人が退場すると別の一人が登場する、といったように順番に主人公に関わっていくため、その場その場で画面に出ている人物はそれ程多くないのです。これも、この作品がどこか寂しげな雰囲気がする理由の一つだと思いますが、このことや上で挙げたことなどが混ざり合いながら生まれる、この作品独特の空気のようなものが、私は割と気に入りました。

 恐らくこの作品も観る人を選ぶ類の映画だとは思いますが、観終わった後になんとなく心に残るものがある良い作品だと思います。(ただし、最初、アイスランド・ロケのロードムービーと聞いた私は、美しいアイスランドの風景を見て自分も行きたくなったりするかな?などと思いながら観ていましたが、あまりに寒そうなので、観終わっても正直言ってあまり行きたいとは思えませんでした(苦笑))

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