Vol. 5 「ロスト・ワールド」

 というわけで、「夏休み映画シリーズ」の3回目は、「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」です。もちろん、これは、1993年の「ジュラシック・パーク」の続編です。もっとも、私自身前作の「ジュラシック・パーク」は劇場で一度観ただけで内容等は既にすっかり忘れていたので、一応、あらかじめ「ジュラシック・パーク」のビデオを借りてきて見直してから観に行ったのですが、そういう意味では思っていたほど前作を引きずっている部分はありませんでした。前作からの登場人物も前回の古生物学者のグラント博士に代わって主人公になった、カオス理論学者のマルカムと「懲りない爺さん」ハモンドくらいなので、私のように「ジュラシック・パーク」の内容を忘れてしまっている人も特に問題無く楽しめると思います。

 ところで、この「ロスト・ワールド」ですが、巷では「特撮はすごいけど、ストーリー性が無くてイマイチ」という評判をよく聞くのですが、逆に余り過剰な期待をしていなかったせいか、私としては結構楽しめました。確かにストーリー性は無いのですが、そもそも、この作品は「恐怖映画」とか「パニック映画」に分類されると思うので、ストーリー性のようなものはあまり要求されない類の映画だという気が(個人的には)します。事実、前作の「ジュラシック・パーク」では、恐竜の恐ろしさと共に主人公と子供達との交流、といったようなものもある程度テーマとして盛り込まれていましたが、今回はむしろ恐竜に襲われる恐怖の方を前面に押し出しています。

 そんなこともあって、私は終始、同じスピルバーグ作品の「ジョーズ」と同じノリで観ていたのですが、さすが「ジョーズ」を撮った監督だけあって、実際、観客を恐がらせるテクニックも非常に上手いです。ただでさえ模型やCGで作られた生き物たちですし、まして巨大鮫とは違って現代には実在しない恐竜達が相手ですから、下手をすれば単なる子供だましにもなりかねないところですが、巧みな演出によって恐竜を恐ろしい存在として見事に表現しています。例えば、これは「ジュラシック・パーク」の時にも見られたやり方ですが、あらかじめその恐竜の特徴などを映画の中で語ることで、観客にその恐竜がどんなヤツでどう怖いのか知らせておくわけです。そして、さらに「今ここで襲われたら…」というようなシチュエーションを用意することによって、次第に恐怖感を煽っていきます。もちろん、こういうことができるのも、そういった演出に説得力を持たせるに十分なCGやSFXの技術があるという事が前提になっているのは言うまでもありません。当然、その辺の技術も前作より遥かに進歩していて、本当に「どうやって撮ったんだろう?」というシーンばかりです。これはもう、いろいろ書くより実際に観て貰った方が早いと思います。

 ただ、日本の従来の怪獣映画を観て育った者としては、観ていて一つだけ何か煮えきらないというか引っかかるものがあるのが気になりました。それは、この作品のテーマとも深く関係していることなのですが、それが具体的に何であるかを説明するには作品の内容にも多少触れなければならないので、ここではあえて書きません。気になる方は、ぜひ、ご自分で観てみて下さい。

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