Vol. 52 「オーシャンズ11」

 さて、現在もまだ公開されている「千と千尋の神隠し」を始め、「ハリー・ポッターと賢者の石」や「ロード・オブ・ザ・リング」といった大ヒット作が、去年から今年にかけて立て続けに公開されています。お陰で、休日の映画館は親子連れを中心にどこも満員状態なわけですが、そんな中で、個人的にちょっと気になっていることが一つあります。それは、上映時間が2時間半を越えるような長編が、最近とても多くなっていることです。例えば、上に挙げた「ハリー・ポッター」や「…リング」もそうですし、また、今年の始め頃に公開された「地獄の黙示録 特別完全版」などは3時間半近くもあります。しかし、さすがに3時間近くも同じ場所にじっとしているのは、肉体的にも精神的にも結構大変です。実を言うと、本当は今回は「ロード・オブ・ザ・リング」を取り上げようと思って劇場に向かったのですが、混んでいたことに加えて、3時間の上映時間に対する「心と体の準備」が出来ていなかったので、こちらは後日に再挑戦することにして、結局、別の普通の長さの映画を観ることにしました。

 そんなわけで、また前置きが長くなりましたが、今回はジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、アンディ・ガルシア、マット・デイモンといったオールスターキャストで話題の「オーシャンズ11」です。内容は、ジョージ・クルーニー演じるオーシャンが、ラスティー(ブラッド・ピット)以下10人の仲間達とラスベガスの帝王ベネディクト(アンディ・ガルシア)の金庫から1億5000万ドルの現金を盗み出すという話で、これ以上無い程厳重なセキュリティーに守られた地下200フィートにある巨大金庫にいかにして潜入し、どうやってそこから大量の現金を運び出すかが、ストーリーのポイントになります。以前、このコーナーで「スニーカーズ」を紹介した時にも書きましたが、私は、この手の「いろいろな特技を持ったエキスパートが集まって、一つのことをやり遂げる」系の話や、「スティング」のようにまんまと相手に一杯食わせるような映画が大好きなので、今回もキャスト云々よりは、むしろその内容に惹かれて観に行ったという感じでした。

 ところで、この「エキスパートが集まって…」系の映画を面白くするには、いかにメンバー各自をカッコ良く活躍させるか、が重要です。例えば、主人公達が絶体絶命のピンチになったり、計画の実行が行き詰まりそうになった時に「そんな時は俺に任せな」とばかりに現れ、観ている側も「ここでコイツが出てくるのか!」と思わせるような展開、これこそが、この「エキスパートが集まって…」系の映画の醍醐味とも言えるのです。しかし、そのためには、そこに至るまでにメンバーのキャラクターをしっかり描いておかなければいけません。「コイツは○○が得意です」と紹介だけして、いきなりすぐ「ほらね?」では、単なるご都合主義になってしまうからです。で、そういった点で、この「オーシャンズ11」はどうだったかというと…。正直、個人的にはちょっと物足りなかった気がします。まあ、11人という人数を考えれば、各キャラクターの描き方にバラツキが出来てしまうのは仕方無いのかも知れませんが、もう少しみんなに活躍の場があっても良かったかもしれません。

 もっとも、ストーリーそのものは期待通りでしたし、また、上に挙げたような豪華キャストが目当てで観に行く場合は、さらに楽しめることは間違いありません。そういう意味で、娯楽作品としては十分オススメできる作品だと思います。

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