Vol. 50 「エボリューション」

 今月は「エボリューション」です。実は、この作品は、当初特に観に行く予定はありませんでした。映画紹介番組とか観ていてもあまり興味を引かれませんでしたし、また、意外と早く(?)公開が終了したりしたので、内容もイマイチなのかと思っていたのですが、たまたま、無料招待券を貰ったこともあり、せっかくだからと言うことで、公開終了間際になって観に行くことにしました。ところが、実際に観てみると、(あまり期待せずに観たからかもしれませんが)これが予想以上に楽しめる作品でした。

 物語は、アリゾナのとある街のそばに隕石が落ちてきたところから始まります。その街の大学で生物学と地学を教える二人の教授が、早速その隕石の一部を研究室に持ち帰り、それを調べてみると、なんと、そこには地球外生物の細胞が…。しかも、それは瞬く間に増殖し始め、さらにすごいスピードで進化していきます。そのうちに街のあちこちで妙な生物が現れ始め、街はパニックに。そして、このままの勢いで増え続けるといずれは地球も危なくなる!?、といったような内容です。

 一応、一種のパニック映画ではありますが、これらのシリアスな状況が全編ギャグタッチで描かれるので、むしろコメディ映画と言った方が正しいかもしれません。特に主人公の二人は、人類の危機が迫っているような状況にもかかわらず、エイリアンを発見した功績やノーベル賞の心配をしているくらいノリが軽く、笑えます。見終わったあと、この感じはどこかで観たな気がするなぁ、と思っていたのですが、すぐに「ゴーストバスターズ」のノリとそっくりなことに気が付いて、その後パンフレットを見ると、まさしく監督が同じアイバン・ライトマンでした。そう考えると、あちこちにそれっぽい雰囲気が漂っています。幽霊とエイリアンの違いこそあれ、荒唐無稽にもかかわらず何故か説得力のあるストーリーから、軽快な音楽、頼りになるんだかならないんだか分からない登場人物に、クライマックスの良い意味でトホホなアイデアとそこに立ち向かっていく主人公達の妙なカッコ良さ、等々。とにかく、「ゴーストバスターズ」が好きな人には十分楽しめる作品だと思います。

 ところで、この映画を面白くしている要素の一つに、登場するキャラクター達の描写が細かいことが挙げられます。主人公はもちろんですが、それ以外の脇役に対しても結構細かく描かれていて、しかもそれが、ちゃんと劇中に生かされています。こういった細かい部分が実はこの手の大味な映画にはとても重要で、ちゃんと考証された設定と共に、むしろ基礎となる部分とも言えるかもしれません。逆にこういう部分がしっかりしていれば、幾ら物語がハチャメチャな展開になっても破綻しませんし、観ている方もそれなりにハラハラしたりしながら画面にのめり込むことができます。振り返って、日本に目を向けてみると、話の内容や展開はほとんど「エボリューション」と同じ(ちょっと乱暴な言い方ですが(笑))なのに、なんで「ゴジラ」(特にここ数年の)は、観ていてイマイチ盛り上がれないのだろう?と考えた時に、ひょっとしたら、この辺に面白くなる答えの一つがあるのでは?という気がします。

 で、その「ゴジラ」なんですが、今年もまた新作が公開されました。しかも、今回はゴジラに加えて、モスラやバラゴン、さらにキングギドラまで登場させるというサービスぶり。そして、なにより監督があの「平成ガメラシリーズ」を撮った金子修介という点が注目されます。今これを書いている時点では、まだ私自身は観ていないのですが、果たしてどんな作品になっているのか今から楽しみです。

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