Vol. 4 「もののけ姫」

 前にも書きましたが、本当に今年の夏は観たい映画が多くて、スケジュールを組むのにも一苦労しているような状態です。そんな中、今月は話題の宮崎駿作品「もののけ姫」を観てきました。いやー、すごかったです。混み具合が。私は有楽町のマリオンで観たんですが、劇場のキャパがそれほど大きくなかったことと夏休み後の祝日に行ったこともあって、開演1時間前に並んだにもかかわらず、立ち見になってしまいました。「ID4」を初日に観に行った時でもこれ程じゃなかったのに。(以下、多少内容に触れることを書きますので、例によって未見の方はご注意下さい)

 観終わった後に一番感じたのは、「今までとちょっと雰囲気が違うな」ということです。最近の宮崎作品は、「となりのトトロ」以降、わりとスケールを抑えたというか、主人公の身近なところだけで起こる話が多かったのですが、今回は「風の谷のナウシカ」以来の非常に強いテーマ性を持った作品になっています。テーマそのものは「人と自然との関わり」という従来の宮崎作品と共通のものですが、この「もののけ姫」ではそこから、さらに1歩踏み込んだものになっています。

 具体的に、今までと違った印象を受ける部分を挙げると、まず、話の展開が非常にシリアスであるという事です。もちろん、これは前述の「テーマ性が強い作品である」ということとも関係があるのですが、特に、宮崎作品によく見られるコミカルなシーンが今回はほとんど無いこともあって、物語のテンションは最後まで張りつめたままです。(そういった意味でも「ナウシカ」にある程度近いかもしれません)また、今回は血を流すシーンが比較的多いのも特徴で、これも今までの作品では余りみられなかったことです。もっとも、流血シーンといっても、それらは当然、演出上の意味があって存在しているわけですが。(ちなみに、私が観に行った時も周りに親子連れがたくさんいたのですが、いつもなら画面に敏感に反応する子供達も今回はほとんどシーンとしていました。それだけ、みんな緊張感のある画面に引き込まれていたという事だと思いますが、逆に、「トトロ」を観るような感覚で観に行った子供達が、果たして楽しめたのか?というと私にはちょっと疑問でした)

 ところで、今までの作品と違うといえば、音楽も今までとはちょっと違った印象を受けました。作曲しているのは、前作までと同様、久石譲ですが、今回はそのほとんどがオーケストラによって演奏されています。これまではどちらかというとシンセ等が主体になることも多く、今までも決して無かったわけではありませんが、ここまで本格的に大編成のオーケストラを使用したのは今回が初めてだと思います。

 他にも、美術(背景)の美しさやデジタル処理を使った映像表現等、素晴らしい点はいろいろとありますが、そういった細かい部分は改めてここで言うこともないので、その辺は実際に劇場で観て確認していただきたいと思います。いずれにせよ、今の日本の映画界で間違いなくトップ・レベルにいる監督の作品は、やはり一度は観ておいて損は無いかもしれません。

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