Vol. 47 「ドリヴン」

 その昔、私が小学生の頃に「スーパーカ− ブーム」というものがありました。と言っても、おそらく知らない人もいると思うので、念の為に説明しておくと、「スーパーカ− ブーム」というのは、フェラーリやポルシェ、ランボルギーニといった、主にヨーロッパの高級スポーツカーのブームのことです。もっとも、スポーツカーのブームと言っても、その担い手の中心はあくまで子供達でしたから、エンジン性能がどうこうなんて部分はあんまり関係無くて、結局の所、どのクルマが一番カッコイイかとかそういった部分で盛り上がっていたわけですけど…。私自身も当時はどっぷりハマっていて、カードやプラモデルをいろいろ集めたりしていましたが、それ同時に夢中になって読んでいたのが、ブームの火付け役とも言われたマンガ、「サーキットの狼」です。

 当然、この「サーキットの狼」もブームに乗って大ヒットし、ついには映画化までされたのですが、ただ、これが、アニメではなく実写だったのです。今と違って、当時はまだ、劇場用オリジナルアニメなんてものはほとんど無く、マンガの映画化といえば、それはすなわち実写映画化という時代でしたから仕方無いと言えば仕方無いのですが、その結果、原作とは似ても似つかない作品になって、原作ファンをガッカリさせるということもよくありました。で、ご多分に漏れず、この「サーキットの狼」の実写版もかなりトホホな出来で、少なくとも、原作通りのストーリーやカーチェイスシーンを期待していた子供達にとっては、とてもつまらない映画でした。(笑)

 さて、前フリが長くなりましたが、今回はカートマシンが町中を疾走するシーンがカッコ良い、「ドリヴン」です。新人カートレーサー、ジミーは、デビュー1年目にしていきなり3連勝し、前年度チャンピオンのボーと熾烈なトップ争いを演じていましたが、周囲のプレッシャーなどから次第にスランプになってしまいます。そこで、チームの監督は、往年の名レーサーであり旧友でもあるジョーをジミーのコーチとして呼び戻し、彼を復活させようとするのですが…、と、話の内容はこんな感じです。そこに、ヒロインが絡んで非常に分かりやすい三角関係を演じたり、師弟愛や兄弟愛なんかが描かれたりします。まあ、一言で言ってしまえば、「スピードに賭けた男達の栄光と挫折、そして恋と友情の熱き物語」といったところでしょうか。 で、なぜ、最初に「サーキットの狼」の話を長々と書いたかというと、そんな「ドリヴン」を観ながら、なんとなく「サーキットの狼」を思い出してしまったからでした。もちろん、話のスケールからお金のかけ方まで、「サーキットの狼」のそれとは比べモノになりませんが、作品の中で描かれているテーマとかは、どことなく似ているような気がします。

 作品の見どころは、上にも書いたように、やはりなんと言っても町中でのカートマシンによるカーチェイスです。こういったカーアクションは、普通の乗用車なんかではいくらでもありますが、それをカートやフォーミュラーカーでやるというのは、意外とありそうで無かった(できなかった?)気がします。少なくとも、同じ事を日本でやろうと思ってもまずできないでしょうし、それが可能なアメリカはやっぱりスゴイと思いました。と同時に、ふと、ひょっとして「サーキットの狼」もアメリカで作ったら、もっと面白くなってたのかな?なんてこともちょっと考えてしまったのでした。

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