Vol. 41 「ホワイトアウト」

 先月紹介した「M:I-2」も含めて、毎年、何本ものハリウッド製アクション映画が公開されていますが、その一方で国産のアクション映画というのは、相変わらず数も少ないですし、また興行成績も決して良いとは言えません。邦画の場合、ハリウッドの作品と比べると制作費や撮影技術の面でどうしても見劣りしてしまいますし、それもあってか、話のスケールも何となくこぢんまりとしたものになってしまうことが多いです。そんなわけで、日本のアクション映画は、国産であるというだけで既にかなりのハンデを負っているとも言えるのですが、そんな中、久々のヒット作となっているのが、今回紹介する「ホワイトアウト」です。最初は、私も「邦画のアクションもの」という先入観から、それほど大したことはないだろうと思って、観に行くことは躊躇っていたのですが、敵のボス役が佐藤浩市ということで、個人的にその悪役ぶりに興味があったこともあって観に行ってみました。実際に劇場に行ってみると、マスコミ等で話題になっていたとはいえ、公開からだいぶ経っているにもかかわらず、アベックを中心にかなりの観客が入っていたので、ちょっとビックリしました。

 ストーリーは既に色々なところで紹介されているのでご存じだと思いますが、新潟県の奥遠和ダムという日本最大の貯水量を誇るダムが、突然、武装したテロリスト達によって襲撃され、そこの職員を人質に占拠されてしまいます。そこは、真冬は豪雪と悪天候に守られた要塞とも言える場所で、唯一、ダムへ通じる道路も破壊されたため、警察は現場へ近づくことすら出来ません。そんな中、たまたま外で作業中だったために難を逃れたダムの職員、富樫は、ダムとそこで人質になっている仲間を救うためにたった一人でテロリスト達に戦いを挑む、という話です。突然襲ってきたテロリストに一人で立ち向かう、というストーリーは、どうしても「ダイ・ハード」を連想してしまいますし、実は、私自身もその点が一番不安だったのですが、実際に観てみると、特に気になるようなところは無かったので、ちょっと安心しました。

 逆に見どころに関して言うと、まず、織田裕二もあちこちで言っているように、冬の雪山でのロケシーンが挙げられます。さすがに氷点下20度という本物の吹雪の中で撮影された画面はかなり迫力があり、今までの日本映画ではあまり見られなかったものです。またストーリーの方では、テロリスト対富樫の頭脳戦が上記の佐藤浩市の好演もあって、なかなか見応えあるものになっています。そもそもこの手の話は、主人公はもちろん、犯人側も頭が良くなくては面白くありません。特に犯人側の作戦や行動にちゃんとした説得力があるということが重要で、これが少しでも欠けると観ている側はシラけてしまいますし、逆に、賢ければ賢いほど、主人公の活躍も光ってくるわけです。そういった部分でも、この「ホワイトアウト」は、かなり納得のいくものになっていました。

 まあ、確かに、ハリウッド製のアクション映画と比べると、それでもまだ、なんとなくスケールの小ささみたいなものを感じてしまうのも事実です。しかし、一応、そういった作品を目指して作って、それなりに成功している点は評価できますし、少なくとも単なる「パクリ映画」とは言い切れない作品だと思います。

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