Vol. 38 「グラディエーター」

 今回は「グラディエーター」です。前回このコーナーで「最近、チャンバラ(殺陣)がカッコ良いと思うようになった」と書いたから、という訳でもありませんが、偶然、今回も剣術モノになってしまいました。「グラディエーター」については、元々それほど興味は無かった、というか、存在自体ほとんど知らなかったのですが、舞台が古代ローマ時代というのが新鮮だったのと、たまたま、先行ロードショーの日に時間があったので、半ば衝動的に観てきました。監督は、「エイリアン」や「ブレード・ランナー」で有名なリドリー・スコット、主演は最近公開された「インサイダー」でも主演していた、ラッセル・クロウです。(なお、今回は公開されてからまだ日が浅いので、情報を知りたくない方はここから先は読み飛ばして下さい)

 西暦180年、ローマ帝国がその栄華を誇った皇帝マルクス・アウレリウスの時代。剣術に長け、また、指揮官としても非常に優れたローマ軍の将軍マキシマスは、部下の兵士達はもちろん、皇帝からも厚い信頼を得ていました。そして、余命幾ばくもないことを自ら悟った皇帝は、皇位を自分の息子のコモドゥスではなく、マキシマスに継承する事を決意します。しかし、それを知ったコモドゥスは自ら皇帝を殺害し、さらにマキシマスまでも処刑しようと企てます。間一髪生き延びたものの、軍を追われコモドゥスによって家族さえも殺されてしまったマキシマスは、全てを失い、ついには奴隷となりながらも、コモドゥスへの復讐のために剣闘士(グラディエーター)として再び立ち上がる、という話です。

 この作品の観どころは、なんと言っても剣と鎧によって繰り広げられる戦闘シーンです。まず、冒頭のゲルマン人との戦争シーンから、いきなり、そのスケールの大きさに圧倒されます。特に兵士役のエキストラの多さにはちょっとビックリしました。そして、最大の見せ場でもある、ローマの巨大コロシアムでのグラディエーター達の戦い。ローマ市民への見せ物とはいえ、そこで行われる戦いは、真剣を使った文字通りの殺し合いであり、負ければそれはそのまま死を意味します。そんな極限状態の中で行われる死闘の興奮は、まさに、コロシアムの観客であるローマ市民のそれと同じものと言えるかもしれません。さらに、そんな状況の中でも強敵を次々に倒し、無敵の強さを誇るマキシマスの痛快さとカタルシス。それは、彼への感情移入が深いほど大きくなっていきます。こういった、生身の人間同士のライブの迫力がある一方で、デジタルエフェクト、中でも、CGIによって見事に表現された巨大なコロシアムや古代ローマの街並みなどは、セットとの合成もきれいで違和感も感じません。そういう意味では、この辺のライブと特撮のバランスの取り方が非常に上手い作品だと思います。

 ストーリー自体はとても分かりやすいものですが、その分一つ一つのエピソードがじっくりと丁寧に描かれているため、内容的にはとても密度が濃いように感じました。確かにもうちょっとコンパクトにまとめることも出来たかな?という気もしますが、少なくとも冗長ではないと思います。一見、単なる娯楽作品のようにも見えますが、実はかなり深いテーマ性を持った作品で、特に、熱い男達の戦いを観たい方には、ぜひ、お薦めします。

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