Vol. 36 「スリーピー・ホロウ」

 既に公開からだいぶ経ってしまいましたが、今回は「スリーピー・ホロウ」です。本来、この手のいわゆるホラー映画は、あまり私の趣味ではないのですが、雑誌の紹介記事を読んでなんとなく興味を持ったのと、正直、今回はあまり他に観たい作品が無かったということもあって、特に期待もせずに観に行きました。監督は一部ではかなり有名で固定ファンも多いティム・バートン。主演はジョニー・デップとクリスティーナ・リッチで、他にもクリストファー・ウォーケンや「エピソード1」でパルパティーン元老院議員役だったイアン・マクダーミッド、さらに同じくダース・モール役だったレイ・パークもスタントとして出演しています。

 話は、1799年、ニューヨーク市警のイカボッド捜査官が郊外のスリーピー・ホロウという村で起きた連続殺人事件の捜査に向かうところから始まります。被害者は全て首が切り取られているというこの奇怪な事件について、村人は皆「首なし騎士」の幽霊の仕業だと言いますが、宗教的な迷信を嫌い科学的な捜査を信条としていたイカボッドは、あくまで論理的に事件を解決しようとします。しかし、そんな彼の目の前にもついにその「首なし騎士」が現れて…、といった内容です。イカボッド捜査官は、事件解決に情熱を燃やす熱血漢で一見カッコ良いのですが、実は非常に臆病者で、そのギャップによる笑いが劇中のアクセントにもなっています。確かにジャンルとしてはホラー映画、それも最近のサイコ的なモノや以前のスプラッタなモノではなく、むしろドラキュラやフランケンシュタインといった古典的なホラーに分類されるような作品ですが、実際は単なるホラーではなく、ファンタジーやコメディ、さらにはアクション映画やラブストーリーの要素なども詰め込まれていて、なかなか贅沢な作りになっています。また、ミステリーとしてもよく出来ていて、真犯人を自分なりに推理しながら楽しむこともできます。(個人的には、作品全体の雰囲気なども含めて、かつての横溝正史の金田一耕助シリーズを思い出してしまいました)

 監督のティム・バートンの作品は、私は今回が初めてでしたが、思ったよりもオーソドックスな撮り方だったのでちょっと意外でした。ティム・バートン監督と言えば、「バットマン」シリーズや「シザーハンズ」、「マーズ・アタック!」等のヒットメーカーですが、同時に細部のオタク的なこだわりや演出、ちょっとブラックな笑い等の作風でも有名で、事実、そういったアクの強い部分はこの作品でも随所に見られます。ただ、私自身はその手の演出は決して嫌いではないこともあって、さほど気にはなりませんでした。むしろ、複線の張り方などがとても巧妙で、この辺はさすがといった感じです。また、カラーでありながらどことなくモノトーンを思わせる美しい画面も作品の古典的な雰囲気にマッチしていて、画作りの点でも旨いと思いました。

 まあ、そうはいってもやはり基本はホラーなので、それこそ死体はゴロゴロ出てきますし、私もちょっとひいてしまうようなバートン調の(?)ブラックなシーンや血なまぐさいカットも沢山あるので、その手のモノが苦手な方はおそらくダメかもしれません。でも、ただ恐がらせるだけの映画ではないことも事実なので、その点はお薦めできると思います。

 CINE HOME