Vol. 32 「ワイルド・ワイルド・ウエスト」

 早いもので、1999年もあと10日ほどになってしまいました。今年も色々な作品を観てきましたが、特に今年は近所に新しく映画館が出来たりしたこともあって、今まで以上に新作を観る機会が多くなりました。そんなわけで、この年末年始も何本か観に行こうと思っていますが、今回は取りあえずその第一弾、ウィル・スミスの「ワイルド・ワイルド・ウエスト」です。実はこれ、今年の夏「エピソード1」の予告編で初めて観た時から公開されたらぜひ観たいと思っていた作品でした。(例によって、未見の方はここから先は読み飛ばして下さい)

 ストーリーは、西部開拓時代のアメリカを舞台に、行動派だが気が短く、何かあるとすぐ銃をぶっ放すジェイムズ・ウエストと慎重派で変装と秘密兵器の発明が得意なアーティマス・ゴードンの2人の連邦捜査官が、合衆国征服を狙うラブレス博士の野望を阻止するために大活躍する、という話です。

 まず、なんといってもオープニングのタイトルバックのカッコ良さに驚かされました。どことなく20〜30年くらい前の外国のテレビドラマのような雰囲気もあって、なかなかイカしています。(実際、この「ワイルド・ワイルド・ウエスト」は、60年代に制作された同名のテレビシリーズのリメイク作品だそうで、私自身は観た事無いのですが、日本でも「隠密ガンマン」などのタイトルで一時期放送されていたそうです)また、バックに流れるテーマ音楽も最近の軽いノリの曲ではなく、「荒野の七人」などを思い出させるような正統派西部劇(?)っぽい曲で、これが逆に作品自体の軽めのノリに妙にマッチしています。

 しかし、私が予告編を観て何より真っ先に惹かれたのは、メカなどもひっくるめた「ワイルド・ワイルド・ウエスト」全体の世界観でした。典型的な西部劇の世界に次々と登場する一見ミスマッチにも思えるハイテクメカ。もちろん、ハイテクといってもあくまで19世紀の話なので、それらは全て蒸気と歯車と鋼鉄で作られているのですが、このアナログな感じが逆に新鮮で、いわゆるスチームパンクと呼ばれるSFの見本のような世界です。こういう荒唐無稽な世界の話を面白くするためには、いかに大きなウソをディテールの説得力で本当らしく見せるかということが大切なのですが、そういった点もこの「ワイルド・ワイルド・ウエスト」はしっかり作られているので、たとえ、あのCMにも登場する巨大なクモ型ロボットが突然現れても違和感を感じません(笑)。ただ、難点をいえば、この映画のもう一つの魅力である、二人の軽妙なやり取りやダジャレを含めたギャグが字幕だとあまり笑えないのが残念です。これは、別にこの映画に限ったことではないのですが、字幕でも一応それっぽい雰囲気の会話に訳したりはしているものの、やはりどうしてもムリが感じられてしまいます。まあ、自分が英語が得意ではないからしょうがないことなのですが…。

 それでも、カッコ良いヒーローにセクシーな女性、アメリカを征服しようと企むマッドな博士とその秘密基地、さらには小粋でシャレた会話からちょっと笑える小道具まで、主人公が2人いることを除けば作品の構成要素はまるで007シリーズのようで、私自身はとても楽しめました。内容は単純明快ですし、気軽に楽しめる娯楽作品として、とりあえず、お勧めしたいと思います。

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