Vol. 31 「トーマス・クラウン・アフェアー」

 今回は、外国に住んでいる友人が現地で先に観て面白かったと勧めてくれた「トーマス・クラウン・アフェアー」です。監督は「ダイ・ハード」や「レッドオクトーバーを追え」などで有名なジョン・マクティアナン、主演は今や5代目ジェームズ・ボンドとしてすっかり定着したピアース・ブロスナンです。例によってストーリーを簡単に説明すると、話は独身ながら投資会社を経営し優雅なVIP生活を送る実業家トーマス・クラウンが、ニューヨークの美術館から「サンジョルジョ大聖堂の落日」という一枚のモネの絵を盗み出すところから始まります。その鮮やかな手口に警察もほとんどお手上げ状態でしたが、その絵に掛けられた保険会社の敏腕調査員キャサリンはクラウンが犯人であることを見抜き、彼を執拗に追い始めます。しかし、互いに駆け引きを繰り返しているうちに、二人はいつの間にか愛し合うようになっていき…、と言った内容です。

 まず、なんと言っても、トーマス・クラウンのキャラクターがとても魅力的です。なにしろ、ニューヨークのど真ん中に自社ビルを持つ会社のオーナーで、休日にはゴルフにヨットにグライダー、おまけにカリブの島に別荘まで持っています。と同時に、犯罪者としての腕も一流で、その優れた頭脳と華麗な身のこなしで高価な絵を盗んでいく冒頭のシーンなどは、めちゃくちゃカッコ良いです。そして、そんなトーマス・クラウンを演じるピアース・ブロスナンがまた見事に役にハマっています。元々彼は、前述のジェームズ・ボンドを始めとした、クールでダンディなキャラクターを数多く演じているのですが、中でも特にこのクラウンはボンドとイメージ的にダブる部分も多いので、安心して観ていられます。もっとも、この映画に関しては、彼は自ら製作も担当しているので、役作りをする上で、むしろ積極的に自身のボンドのイメージを利用しているようにも見えます。あと、この映画のもう一つの見どころは、ジョン・マクティアナン監督の演出です。私も「ダイ・ハード」や「レッドオクトーバーを追え」は好きな作品ですし、今回、これを観てみようと思った理由の一つも彼の監督作品だから、というのがありました。今まで、どちらかというとアクション映画の人、という印象が強かったので、果たしてどんな感じになるのだろうと思っていましたが、この作品を観て彼がアクション以外でも十分イケることが分かりました。

 個人的には「盗みのテクニック」のような部分をもっと観たかったので、今回は「ロマンス」の部分がちょっと多すぎたかな?という気もしますが、いずれにしても、大人向きのエンターテイメントとしてとても楽しめる作品でした。ところで、この「トーマス・クラウン・アフェアー」は、1968年のスティーブ・マックィーンとフェイ・ダナウェイの名作「華麗なる賭け」のリメイク作品でもあるのですが、残念ながら私自身はこの「華麗なる賭け」の方はまだ観た事がありません。話ではかなり印象が違っているそうなので、いずれこちらのオリジナル版も観てみようと思っています。(関係無いですが、クライマックスのトリックを見て、「これって、○○○じゃん!」と思う人って、やっぱり結構いるのかな?(笑))

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