Vol. 26 「カラー・オブ・ハート」

 前々回、「スター・ウォーズ -エピソード1-」まで、あまり観たい作品が無い、と書きましたが、せっかく近所に映画館が出来たのだし…、ということで、最近は割と頻繁に映画を観に行ってます。そうやって観てみると結構面白い作品もあるもので、今回の「カラー・オブ・ハート」もそんな作品の一つでした。

 真面目で大人しく、「プレザントヴィル」という、50年代の白黒TVドラマが大好きな高校生のデイビッドは、ある日、いつも遊び回っていてイケイケな双子の妹、ジェニファーとチャンネル争いをしているうちに、ふとしたきっかけで、二人共その「プレザントヴィル」のドラマの世界にタイムスリップしてしまいます。突然、ドラマの中の主人公の兄妹になってしまった二人ですが、「プレザントヴィル」オタクであるデイビッドにとっては、むしろ自分の家の庭のような世界でもあり、戸惑いつつもとりあえずはそこで生活を始めることにします。ところが、兄と違ってもともと「積極的な」ジェニファーが、本来「プレザントヴィル」の住人がしてはいけないあることを「して」しまった為に、それまでいつも平和で、全ての人が幸せに暮らしている理想の街に少しずつ変化が起き始め、それと同時に今までモノクロだった世界に次第に「色」が付きはじめてしまうという話です。

 実は、この「色づいて」いく様子というのが、この映画の見所の一つで、これは、実際には文字通りモノクロの画面の一部分だけに色を付けたり、1カットの中で画面をモノクロからカラーへ滑らかに変化させたりする事で表現しているのですが、使い方がとても上手く非常に綺麗なのです。もちろん、こういった加工そのものはCM等でもよく見かけますし、特に目新しくはないですが、さすがにここまで徹底的にやっているものは私も初めて見ました。いわゆる、SF超大作に比べればかなり地味な使い方ではあるけれど、この映画もまた現在のデジタル技術があって初めて映像化できた作品と言えると思います。まあ、いずれにせよ、この映像の美しさについては、いろいろ書くよりも実際に観て貰うのが一番早いでしょう。

 基本的にはコメディ映画です。昔のTV番組の中にタイムスリップしてしまうという、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のような現代との時間的ギャップの面白さに加え、架空の世界ならではの面白さ(例えば、「プレザントヴィル」の世界では「街の外」というものが存在せず、街の住人はみんなその中で毎日同じ事を繰り返している、など)もあって、なかなか笑えます。また、その一方で、現代社会における生活様式や価値観等の急激な変化に対して、それを歓迎する人々と従来の形を維持しようとする人々との対立、さらには人種間の差別や争いといったことを「色の付いた」人々と白黒のままの人々との対立によって暗示させるなど、結構シリアスなテーマも語られています。そのままでもとても良くできたファンタジック・コメディなのですが、このように、さらにそこから一歩踏み込んでいるところにこの映画の懐の深さがあり、その構成にも感心します。そんなわけで、私にとっては、今年観た中では今のところ「CUBE」に次いで「当たり」の作品でした。

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