Vol. 23 「ガメラ3」

 このコーナーも「森の里C.B.」の前身の「風見鶏」時代を含めると、今月で43回目になりますが、その第1回目に紹介した作品が「ガメラ -大怪獣空中決戦-」でした。そして、今回はその平成ガメラシリーズの第3弾、「ガメラ3 -邪神<イリス> 覚醒-」です。私自身、1作目、2作目ともにかなり気に入っていましたし、一応、この「ガメラ3」が3部作の完結編ということで、今回は「ガメラとは一体何なのか」というシリーズの最も根本に関わる問題にまで触れると聞いて、早速観に行ってきました。(なお、今回の紹介は、作品の雰囲気など、ややネタバレ的な内容も含みます。もちろん、具体的なストーリーに触れることはしませんが、まだ観ていなくて、観る時はそういった事前情報や先入観無しで観たいと思っている方は、ここから先は読まないようにすることをお勧めします)

 まず、毎回話題になる特撮ですが、これに関しては(当然ですが)前2作よりもさらにその技術が向上しています。例えば、1作目の頃は「頑張ってるなぁ」というのは伝わってきても、実際は観ているこちら側が特撮だということを何となく意識してしまう(言い替えれば特撮がバレている)事もあったのですが、この「ガメラ3」では、もはやそういったことを全く意識せずにストーリーに集中して観ることができました。つまり、それくらい自然になっているということで、そういった意味では(多少大袈裟かも知れませんが)ハリウッドのそれと同等、部分的にはそれ以上と言えるようなところもあると思います。特に、今回の特撮シーンは「怪獣同士の戦いによる都市破壊の恐怖」という部分を改めて強調していて、それらを精巧なミニチュアやCG合成によって見事に表現しています。他にも、1作目のキャラクターの再登場や今回のもう一人の主人公である比良坂綾奈役の前田愛の熱演など人間側のドラマの見どころも色々あり、「大人も楽しめる怪獣映画」という点は今まで通りです。

 ただ、個人的な感想を言えば、今回の「ガメラ3」は、前2作に比べると残念ながら私の中では若干評価が落ちます。その一番大きな理由は、全体的にやや中途半端というか、消化不良な感じを受けることです。1作目が成功した理由の一つに、話のシンプルさというのがあったと思います。話自体を非常に分かりやすくするかわりに、周りの設定部分を綿密に構築することによって画面に説得力を持たせ、結果的にそれが映画の厚みを生み出していました。そういう意味では、今回は逆にストーリーに色々な要素を詰め込み過ぎていて、その分、肝心のガメラやイリスの戦闘シーンの印象がイマイチ薄くなっているような気がします。また、その細かい内容を説明する為に登場するキャラクターも今まで以上に多く、結果的に一人一人が十分に描き切れていない感じです。もちろん、観ていてワクワクするようなシーンも沢山ありますし、現在の日本映画の中では、かなりレベルの高い作品であることも確かなのですが…。

 最後に、エンディングの話です。これも結構、賛否両論分かれるところだと思いますが、私としてはあれはあれで良かったような気もします。まあ、ある意味「逃げ」のような気がしないでもないのですが…。(でも、やっぱり、納得いかない人も多いんだろうなぁ(笑))

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