Vol. 19 「麻雀放浪記」

 突然ですが、私は割と麻雀が好きです。と言ってもヘタの横好きというヤツなので、はっきり言って弱いのですが…。で、そういえば、最近人間相手には打ってないなぁ、などと考えていたら、急に「麻雀放浪記」のことを思い出しました。この映画は1984年の作品で、私は既に2回くらい観ていますが、前に観たのはもう何年も前で所々忘れている部分もあるので、久々に観てみようかな?と思って早速ビデオを借りて来ました。今月はその「麻雀放浪記」です。

 そんなわけで、 今回改めて見直してみたのですが、やっぱりこの映画は面白いです。ストーリーは、哲という青年がいろいろな人と出会い、恋をしたり挫折したりしながら一人前の博打打ちに成長していく話で、もちろんメインは麻雀シーンですが、麻雀を知らない人でも一種の青春グラフィティとして充分に楽しめる作品になっています。もっとも「博打打ち」の映画なので、登場人物はまっとうな商売をしていない人間ばかりですし、舞台は戦後のヤミ市の頃、さらに全編モノクロ画面、と一見非常に暗い映画に見えるかもしれません。しかし、実際は決してジメジメした話ではありません。確かにこういう話なので、裏切ったり騙されたりというシーンも多いですが、それを恨んだり殺しあうといったことは無く、登場人物もみんな基本的に根っからの悪人というわけではないので、画面が殺伐とすることも無いです。しかも、その登場人物を演じているのがどれも芝居の上手い人たちばかりで、これもこの映画を面白くしている要素の一つです。主演の真田広之もさることながら、脇役に鹿賀丈史、高品格、加賀まり子、大竹しのぶ、名古屋章、加藤健一、天本英世、などといった個性的な人が揃っていて、ある意味非常に豪華なキャスティングになっています。特に、(確か)この映画をやるまで麻雀を知らなかったという鹿賀丈史とそれまでも名脇役として活躍してきた高品格の2人の雀士がカッコイイです。また、加賀まり子と大竹しのぶも対称的な2人のヒロインを好演しています。(個人的には、大竹しのぶはこの手の薄幸そうな役をやらせたらピカイチだと思います)

 メインである麻雀シーンついては、これはもうほとんど麻雀劇画のノリで「大三元」、「四暗刻」、「大四喜」、「天和」(しかも2回連続(笑))といった役満がバンバン出てくるので観ていて気持ち良いです。それ以外にも「積み込み」といったイカサマのやり方や勝負中の渋いセリフなど、麻雀を知ってる者にとっては思わずニヤッとしてしまうシーンも沢山あります。(ただし、実際に使えそうなテクニック等はあまり出てこないので、これを観ても麻雀が上達するとは限りませんが(笑))

 難点を挙げるとすれば、音楽と見た目が地味であること、そして「麻雀」、「博打」といった言葉から来るネガティブなイメージでしょうか?しかし、金を掛けなくても脚本が良ければ面白い映画は出来るという好例のような作品ですし、見た目の印象で避けてしまうには惜しい佳作だと思います。少なくとも、麻雀好きの人は必見と言っても構わないでしょう。ただし、ヒーローものの映画を観た後のように、これを観てなんとなく自分も強くなった気になって、ヘタな博打に手を出したりイカサマ麻雀をしたりすることの無いように気をつけて下さい。

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