Vol. 18 「アベンジャーズ」

 今月は、TVの新作映画の紹介番組でたまたま観てちょっと面白そうだと思った「アベンジャーズ」という作品を観てきました。もともと「アベンジャーズ」は、60年代にイギリスで作られ、その後、世界中で大ヒットした1時間もののTVドラマで、これはその劇場用リメイク版です。(ちなみに、日本でも67年に「オシャレ(秘)探偵」という邦題で放送されましたが、あまり人気が出ずにすぐに打ち切られてしまったそうです)話の内容はいたって単純明快。イギリスの秘密諜報機関「ミニストリー・シークレット・サービス」のエージェントであるジョン・スティードとエマ・ピールという男女2人組が、天候を自分の思うままに操ることが出来る装置を使って世界征服を企むサー・オーガスト・デ・ウィンターと戦う、という話です。主人公が秘密諜報部員である、という設定に加え、悪の親玉サー・オーガスト役にショーン・コネリーが出演していることなど、007好きにとっても無視できない要素が多い作品です。(もっとも、スティードの場合、007に比べるとどことなく頼りないような気もしますが)

 観終わった後の感想を一言で言うと「えらく、すっとぼけた映画だなぁ」でした。(笑)とにかく、オシャレであれば全てが許されるような映画で、それこそ、諸々の設定からキャラクターの行動やセリフ、小道具に至るまで、どれもよくよく考えてみるとどこかヘンなのですが、(「オシャレである」ということ以外、)それらに対しての具体的な説明や根拠のようなものはほとんどありません。そういう意味では、ツッコミを入れようと思えばいくらでも入れられるような映画でもあるのですが、そういう見方をするのはこの作品に限ってはヤボというものなのかも知れません。

 そんなわけで、良く言えば荒唐無稽で何でもありの世界なのですが、ただ、あまりに説明不足な部分が多く、どちらかというとノリだけで話が進んでしまう感じもあるので、全体的に中途半端な印象を受けます。設定自体は面白い部分も結構多く、もうひと工夫すればもっと良くなる作品だけに、この辺はとても惜しいところです。また、この映画では街中のシーンであっても建物の看板はおろか、一般の通行人すら登場しません。パンフレットによれば、これもオシャレというか、非現実性やファンタジー性を強調する為に意図的にそうしているらしいのですが、その分登場人物も少ないので、世界征服を企む人間が出てくる話の割にはスケールが小さく感じられてしまいます。さらにもう一つ残念なのは、字幕の日本語訳に少し無理があるような気がする点です。これは、決して翻訳者のせいではなく、ストレートにモノを言わずに妙に遠回しに言うイギリス独特の言い回しや、言葉を別の意味に引っかけたセリフが多い為で、それをそのまま訳すとなにかズレた感じになってしまうのです。(まあ、こういったオリジナルのセリフの面白さまで楽しもうと思うのなら、やはり最後は自分のヒアリング能力を高めるしかないのですが…)

 個人的には、非常にカッコ良いオープニングやちょっとシュールな感じの美術など、気に入った所も多かったのですが、いずれにしても、シリアスな部分はあっても決して重たくはならない、この独特なノリについて行ければそれなりに楽しめると思いますし、ダメな人にとっては、全然面白くない映画かもしれません。

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