Vol. 17 「スプリガン」

 今月は久々にアニメ作品です。最近は、あまり劇場用アニメで観たいと思う作品が無くて、今回の「スプリガン」も公開直前までほとんど興味がありませんでした。最近になって、「AKIRA」の大友克洋がスタッフとして参加しているということを知り、半ば衝動的に観に行くことにしました。当然、「スプリガン」の原作を読んだことも無く(原作の存在も知りませんでした)、そういう意味では、この作品については全くの予備知識無しで観る形になったわけですが、想像していた以上に分かりやすいストーリーで、それなりに楽しむ事も出来ました。ちなみに、監督は以前ここでも紹介した大友作品「MEMORIES」の中の「最臭兵器」で作画監督をしていた川崎博嗣。キャラクターデザインと作画監督は江口寿志が担当しています。また、大友克洋自身はこの作品では総監修及び構成を担当していて、作品の内容そのものにはそれ程関わっていないようですが、川崎監督自身は長いこと大友克洋とコンビを組んでいることもあってか、いわゆる大友テイストみたいなものはかなり感じられる作品になっています。(なお、今回もまだ公開中の作品ですので、未見の方は注意願います)

 一応、例によってどんな話かを簡単に説明しておくと、かつて地球上に存在した超古代文明の遺産を現代に蘇らせ、それを悪用しようとする者達に対して、それを阻止しそれらの遺跡を封印することを目的とした「アーカム」といわれる組織があり、その「アーカム」の工作員の事を「スプリガン」と呼びます。そして、ストーリーはこの「スプリガン」のNo.1である「御神苗 優」とその敵対組織との戦いを中心に展開していくことになります。

 さて、この作品の見どころですが、まずは、そのスピード感のあるアクションシーンが挙げられると思います。当初、5万枚の予定だった作画枚数が、最終的には8万枚を越える程までになったというだけあって、キャラクターはもちろん、それを追いかけるカメラも含めて非常によく動きます。このスピードある画面の動きが、もともと類稀な運動能力と反射神経の持ち主である御神苗の超人的な強さにシンクロしていて、観ていて気持ち良かったです。また、対する敵のキャラクターもなかなかエキセントリックで、出来ればこの辺の御神苗対中ボス(?)の戦いをもう少し観たかった気がしました。

 そんなわけで、物語の前半は、御神苗の活躍を中心にテンポよく進んでいくのですが、残念ながら話が後半になってクライマックスに近づくと物語を進行させることの方がメインになってしまい、その辺のカタルシスみたいなモノがちょっと薄れてしまいます。また、脚本も割とオーソドックスというか、ありがちな感じで、あまり意外性は感じられませんでした。話の中心である「ノアの箱船」のデザインやそれらを含めた色々な設定は結構面白いだけに、この辺はもう一ひねりして欲しかったようにも思いました。もっとも、上にも書いたように私は原作を全く知らずに観たので、原作を読んでから観れば、また印象が違ったかも知れません。「スプリガン」という作品自体にはそれなりに興味を持てたので、もし、機会があれば、一度原作の方も読んでみたいと思います。

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