Vol. 16 「NIGHT HEAD」

 世間では夏休みもそろそろ終わりといった感じですが、「もののけ姫」、「ロスト・ワールド」、「スター・ウォーズ - 特別編 -」、「スピード2」、「エイリアン4」と非常に豊作だった昨年と比べると、どうしても今年の夏休み映画はイマイチ地味な印象を受けてしまいます。ところで、こういう夏の暑い日は、やはり定番としてホラーものというのがあります。レンタル店に行ってもこの時期はホラー特集をしたりしてますし、最近であれば、ビデオ化されたばかりの「リング」、「らせん」といった旬な作品もあります。が、実は私自身がそっち系が苦手なので、残念ながらそれらをここで取り上げることが出来ません。(笑) そこで、この「らせん」の監督をしている飯田譲治の出世作とも言うべき、「NIGHT HEAD - 劇場版 -」を今月はネタにしたいと思います。

 ご存知の方も多いと思いますが、この作品は、もともと92年の10月から93年の3月にかけてフジTVの深夜で放送されていた30分のドラマでした。放送開始当初は、さほど騒がれることも無かったこのドラマですが、途中からだんだん火がつき始め、放送が終わる頃には一部の女性ファンから絶大な支持を受けるまでになりました。そして、その後に続編という形で映画化されたのが、この作品です。内容は、サイコキネシスの能力を持った「霧原直人」とリーディング、プレコグニション(予知能力)を持った「霧原直也」という、2人の超能力者の兄弟の話です。ただ、超能力者といっても、この作品では悪者をやっつけていくヒーローというよりは、むしろ、決して自分で望んで得たわけではないその能力によって、悩んだり苦しんだりする存在として描かれていて、雰囲気はいたってシリアスです。主演は、やはりこの作品でブレイクしたと言える、豊川悦司と武田真治。さらに、この劇場版では、彼らの他にゲストキャラとして、この作品の後、豊川悦司と一時期騒がれた小島聖や、やはり最近ではすっかりメジャーになった奥菜恵などが出ています。

 私自身は、この「NIGHT HEAD」はTVシリーズが始まった頃から観ていますが、最初に観た時の印象は「なんか暗いドラマだなぁ」といった感じでした。話の内容も主人公の性格も暗いし、夜のシーンがやたら多いこともあって、画面そのものも暗く重い印象を受けたからです。しかし、ただ、暗いだけではなく、低予算ながらもとても丁寧に作られていたりして、見続けているうちにいつの間にかハマってしまいました。

 「NIGHT HEAD」の面白さは、言うまでもなく飯田譲治による演出や脚本にあるのですが、その他にそのキャスティングも魅力の一つです。主人公の二人はもちろんですが、それ以外の脇役陣も演技力に定評があり、かつ一癖も二癖もある人をあえて選んでいるような気がします。当然、この劇場版でもそれは同じで、例えばこういう話では、敵役のキャラクターが話を面白くするためには非常に重要ですが、今回新たに敵として登場する三雲役の篠井英介もまた、そういう意味では見事にハマっています。

 細かいことを言えば、それまでのTVシリーズを観ていない人には、イマイチ物語の背景部分が掴みづらいといった難点もあるのですが、それでもそれなりに楽しめますし、逆にこの機会にTVシリーズも全部観てしまうというのも良いかも知れません。

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