Vol. 14 「遊びの時間は終わらない」

 今回は、本木雅弘主演の「遊びの時間は終わらない」というコメディです。このコーナーを始めてからずっと劇場用作品を取り上げてきましたが、今回は初めてのオリジナルビデオ作品です。正確には一部で劇場公開もされたらしいのですが、私の記憶では、もともとはオリジナルビデオとして制作されたのだったと思います。(もし、私の勘違いでしたらすみません)前から気になっていた作品だったのですが、なかなかタイミングが合わず、先日ようやく観ることができました。

 ストーリーはというと、とある街(正確にはいわき市)の信用組合にある男が銀行強盗に入ります。が、実はこれは地元の警察がイメージアップを図るために企画した「実地訓練」。その場にいた客も全て刑事が扮していて、そのまますぐに犯人役の警官を逮捕してめでたし、となるはずでした。ところが、この犯人役に選ばれたのが、生真面目でおまけに融通の利かない頑固者の「平田」。彼は「役」を完璧に演じようとするあまり、逮捕するはずだった刑事を銃で殺害し、さらに客と行員全員を拉致して篭城してしまいます。ただし、これもあくまで訓練ということで、全ては「やったつもり」。しかし、いつの間にかマスコミまで駆けつけるほどの大騒ぎになってしまった以上、警察としても「犯人」を「逮捕」しなければカッコがつかない、というわけで、あの手この手で何とか「逮捕」しようと躍起になる、という話です。この大のオトナが大真面目に「銀行強盗ゴッコ」をやる、というアイデア自体も面白いのですが、なにより「犯人役」をひたすら真面目に演じ続けようとする「平田」のバカバカしさと、それに振り回され続ける署長をはじめとする警察のお偉方のマヌケさが笑えました。多少、設定に無理があったり強引な展開などもありますが、その辺はノリと勢いで観る側を納得させてしまいます。

 また、俳優陣も個性的な人が揃っていて、特に脇役の石橋蓮司、斉藤晴彦、萩原流行、原田大二郎、今井雅之、モロ師岡、あめくみちこ、といったベテランがとてもイイ味を出しています。ある意味「濃い人」が脇を固めているため、逆に本木の妙な落ち着きと無表情さが際だっていて、何を考えてるかよく分からない「平田」にとてもマッチしています。野次馬やマスコミなどに多くのエキストラを使った(実際に、いわき市で行っていると思われる)ロケも大がかりで、ビデオ作品にしてはかなりの制作費が掛かっていると思います。

 そんなわけで、なかなか楽しめる作品ではあるのですが、残念ながら、現在このビデオを観るのは結構難しいかも知れません。この作品自体、どちらかというとマイナーな部類に入ると思われるので、必ずしもレンタルビデオ店に置いてあるとは限りませんし(私の家の近所の「TUTAYA」にはあったのですが)、まして、制作されたのが1991年とやや古く、しかも、もとがオリジナルビデオ作品ということで、パッケージソフトは既に手に入らない可能性があります。(実際、ビデオソフトの目録をざっとチェックしてみましたが、見当たりませんでした)逆に、もしレンタル店で見かけたらラッキーかも知れないので、一度借りて観てみるのも良いかも知れません。

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