Vol. 12 「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」

 今月は久々の新作です。と言っても、例によって私の個人的趣味まる出しなのですが …。まあ、元々そういう主旨のコーナーなので、その点はお許し下さい。そんなわけで、 今月は007シリーズの新作、「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」です。この作品、欧米で は昨年のクリスマス映画として既に公開済みなのですが、どういうわけか、日本では3カ月 近くも遅れて、この3/14にやっと公開されました。

 もはや必要無いかもしれませんが、一応、ストーリーを簡単に説明しておくと、例によ ってイギリスの諜報部員、007ことジェームズ・ボンドが、世界征服を企む悪者と戦うと いう、単純なお話です。今回の悪者は、エリオット・カーヴァーというメディア王。新 聞、TVからパソコンソフトに至るまで世界中のメディアを牛耳っているという、何とな くあのマードックやビル・ゲイツを彷彿させるような設定です。そんな彼が、中国とイギ リスを故意に武力衝突させて第三次世界大戦を勃発させ、それを独占取材する事によっ て、最終的にはメディアの力で世界を征服しようと企みます。それに対し我らがボンド は、中国の女性エージェント、ウェイ・リンと協力しながらそれを阻止するわけです。ま あ、非現実的といえば非現実的ですが、世界大戦はともかく、メディアを使って世界征服 をしようとするという話は、現代ではそれなりに説得力があるような気もします。

 ところで、今回で18作目になる007シリーズには、いわゆる「お約束」が幾つかありま す。それは例えば、毎回必ず出てくるキャラクターやお馴染みのセリフだったりするわけ ですが、作品の構成そのものもそういった「お約束」の一つと言えます。すなわち、まず 最初は、作品は観たことなくてもこの曲だけはたいていの人が一度は聞いたことがあると いう、有名な007のテーマ曲で始まる銃口をイメージしたオープニング。続いて、本編と は直接関係無い、短いシークエンスでボンドがひと仕事するところを見せ、その後にタイ トルバック。このタイトルバックも毎回その作品のテーマに関するモチーフと女性のシル エットの絡みというようにスタイルが決まっています。そして事件発生。上司「M」から 指令を受けたボンドは、「Q」の開発した秘密兵器を受け取った後、調査を開始します。 途中、敵の殺し屋と対決したりボンドガールと楽しんだりしながら、最後は敵の野望を阻 止して、見事作戦成功。ラストはボンドガールとのラブシーンからエンドタイトルになっ て終わり、という具合です。これらの構成は、今回の「トゥモロー・ネバー・ダイ」も含 め、シリーズの全作品を通してまず変わることはありません。マンネリと言われればそれ までですが、逆に言えば、少し複雑な「水戸黄門」と言うこともできます。もちろん、普 通に観てもそれなりに楽しめる映画ですが、古くからのファンにとっては、この辺の「お 約束」を観るのも楽しみの一つだったりするのです。

 実は今回、上映前に劇場で客層を観察してみたんですが、男性が多いのは分かるとし て、年齢が私より上の人、それも最近の映画館では余り見かけないような40〜50代くらい の人が特に目立ってました。ただ、逆に若い層が少なかったのは、シリーズの今後を考え ると多少不安な部分でもあるので、もし、これを読んで面白そうだと思った方は、ぜひ、 劇場に足を運んでみて下さい。

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